「フランス・スイス短期海外調査」報告記

2016年度経済学部主催の短期海外調査(欧州圏)では、9月15日から26日まで松本先生引率のもと、学生10名がフランス地方都市・農村とスイス・ジュネーヴを訪れ、現地大学生との討論・交流会、政府機関や日系企業でのヒアリング調査、文化施設の視察を行ってまいりました。現在、最終報告書を作成中ですが、経過報告として、調査団メンバーの旅行記を以下に掲載いたします(上記調査は、三井住友銀行様、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)および一橋大学基金のご支援を頂き、松本先生の基礎ゼミとセットで、海外調査A/Cとして授業休業期間(夏季)に行われました)。

2016年度フランス・スイス短期海外調査について 岡本尚樹(経済学部2年)

 短期海外調査は一橋大学経済学部「グローバル・リーダーズ・プログラム」の一環として2013年度より開始されたプログラムで、アジアの新興国やEU(欧州連合)加盟国やその周辺地域の調査を行ってきました。本年度、私たち学生10名は9月15日から26日にかけてフランス(リヨン、ストラスブール、他)およびスイス(ジュネーヴ)を訪問しました。リヨン政治学院での討論会および交流会、日系企業や日本貿易機構(JETRO)のヒアリング調査、世界貿易機関(WTO)の見学、文化遺産や地方都市の訪問などを通して、EU 政治経済の現状、各国の経済や文化の特質についての理解を深めるとともに、EUが成立した歴史的背景や意義を確認しました。今回のプログラム参加にあたって、私たちは週1回のゼミナールを受講し、英語力の向上に努めるとともに、今日のEU諸国の経済・社会の実情への理解を深めるうえで基盤となる知識を身につけました。また、リヨン政治学院での討論会に向け、EU諸国が今日直面している政治的、社会的、経済的な諸問題のなかから、各自の興味関心に基づいて設定した具体的なテーマに焦点をあてて調査し、英語でのプレゼンテーションの準備を行いました。帰国後は、優れたコミュニケーション能力を身につけるというプログラムの趣旨に基づき、英語での調査報告書を作成しています。また、フランス・スイスで得られた知見や疑問を生かして、各自が更なる問題意識をもち、プレゼンテーションを行うことで、お互いの知識を深め合っています。この一連の参加型実地教育を通じて、私たちは、世界のさまざまな問題の解決策を考える力と分析方法を修得することを目指しています。

出発前成田空港での集合写真

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リヨン政治学院での討論会と交流 岩崎七帆(社会学部2年)

 リヨンに到着した翌日、私たちはリヨン政治学院にて現地の学生と討論会・交流会を行いました。現地の学生の中には日本の大学に留学した経験ある学生もおり、とても意欲的に討論へ参加をしてくれました。討論会ではまず、「EUの諸問題」と「EUと日本の比較」をテーマに2つのグループに分かれ、その中でも一人ひとりが独自にテーマを決めてプレゼンテーションを行いました。各々のテーマはEUを題材にヨーロッパ経済や移民問題、教育や女性のワークライフバランスなど多岐にわたり、今年度(2016年)4月から始まったゼミではプレゼンのためのリサーチに多くの時間を割きました。
 当日は全体として、よい緊張感の中でプレゼンを行うことができたように思います。その後の質問からは、新たな視点を多く得ることができました。私が受けた質問の中に、なぜ高等学校からの学費が高額であるのに、高い就学率を保持しているのかを聞かれ、すぐには答えられませんでした。そもそも日本の就学率が相対的に高いという事実を認知した上で、日本と他国の教育に対する比較考察をしていなければ答えられる問いではありません。また、移民問題に対しても議論を通して、日本の移民政策に対する保守的態度を強く認識させられる意見を多くもらいました。お互いに英語は第二言語であり、コミュニケーションが困難な場面もありましたが、有意義な討論ができたと思います。
 その後の交流会では、和やかな雰囲気での団らんでした。プレゼンのテーマにはなかったスカーフ事件やヨーロッパ諸国で頻発するテロリズムについても少し聞くことができました。また、普段の生活や現地の食事についてなど日常のことも話せたので、親交を深められたように思います。フランスの知見を得ることはもちろん、そこからさらに日本を見つめ直すきっかけをもらうことができました。大変貴重な経験をさせていただいたと思っています。

リヨン政治学院の学生との討論会後の記念写真

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オワン・ペルージュ視察訪問 永井俊太郎(経済学部2年)

 リヨン政治学院での討論会を終えた翌日の9月17日、私たちは「フランスの最も美しい村」に認定されているオワンとペルージュを順に訪れました。観光でフランスに行くという際に、その認知度からどうしてもパリやリヨンの都市部などに目がいってしまいますが、日本では見ることのできない中世の面影を色濃く残すこのような小さな村落に足を運べたことは大変貴重な経験だったと思います。
 この地方独特の黄色がかった石造りの家々が立ち並び石畳が広がるオワンで最初に訪れた観光センターでは、市長のコレクションだという数多くの手回しオルガンや自動ピアノを拝見しました。毎年開かれる伝統的なお祭りには欠かせない楽器で、ハンドルを回すだけで誰でも曲を奏でることができるので研修メンバーの数人も体験させてもらいました。牧歌的な曲を聴いて祭りで人々がにぎわう村の光景を想像したのは私だけではないでしょう。その後、センター職員の方から勧められ村のシンボルである教会に向かいました。教会といっても礼拝堂というよりは塔の形をした城塞のようで、螺旋階段を登り切った頂上から眺めた景色は美しい、の一言だけでは表現しきれないものがありました。
 オワンでリヨン名物の昼食に舌鼓をうった私たちは、次にバスでペルージュに向かいました。オワンに勝るとも劣らない幻想的な風景が私たち一行を優しく出迎えてくれます。とあるお店に入ると中世の騎士が装着していた武具のレプリカを販売しており、その重厚かつ壮麗な鎧・矛・盾を見た私たちは日常生活だけではない中世の側面に触れることができました。
 本研修は、フランスに赴きその歴史を肌で感じ取ることを目的の一つとして掲げていました。社会科学の最高学府に身を置く学生として、外国への理解を歴史的観点から掘り下げられたことは有意義に感じられましたし、この二都市への訪問は普通のフランス旅行とは一線を画す内容だったといえるでしょう。

高台から臨んだ風景

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リヨン市内視察 梅澤美紀(社会学部2年)

 4日目、ベルクール広場に着くと、少し遠くにフルヴィエールの丘にそびえ立つノートルダム大聖堂が見えました。ソーヌ川にかかる橋を渡り、ケーブルカーで丘の上に向かいました。大聖堂を構成する2つの教会のうち上側は豪華な装飾で荘厳な雰囲気でしたが、下側はシンプルなつくりになっていました。テラスからはリヨンの街を一望することができました。赤い屋根の可愛らしい建物とその間を流れる川の景色が素敵でした。
 丘の上からの景色を満喫した後、旧市街に向かいました。雨の日にもかかわらず、かなりにぎわっており、石畳の細い道を進むのが大変でした。美食に目がない私は、「美食の街」といわれるリヨンの旧市街で食べる昼食を非常に楽しみにしていました。美しい石畳の街の雰囲気を楽しみながら、期待を裏切らない料理が食べられて満足でした。
 美食を堪能した後、サン・ジャン大聖堂を訪れました。フルヴィエールの丘のふもとに建つこの建物の中には、巨大な絵画や聖書が置かれていました。文字を読めない市民に対し、図解的に教義を解こうという配慮のもと建てられたそうです。丘のふもとの旧市街の通りにあるという立地からも、街の人々が親しみやすい雰囲気をもっているように感じました。
 再び旧市街を散策しつつ、リヨン美術館に向かいました。地方美術館でありながらも非常に多くの絵画や彫刻が展示されていました。「小さなルーブル」と呼ばれるのも分かるような気がします。来館者の中には外国人観光客も多いと思うのですが、展示物の説明はフランス語表記のみでした。正直、あまり美術に詳しくない私には理解できないものも多かったです。この美術館に限らず、リヨンは観光地であっても英語での対応をそれほどしていないように思います。私は大学でフランス語の授業をとっているので、ある程度のフランス語はもっと理解できるように勉強したいと感じました。

ノートルダム大聖堂から見たリヨンの街並み

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サン=テチエンヌ企業訪問 八木悠希(経済学部2年)

 切削加工を用いて精密機械の部品製造を行うDyshow社とAS-MECA Bernard社が位置するフランス、リヨン郊外の工業の町、サン=テチエンヌに行ってきました。この報告記では、フランスについて、工場見学を通じて初めて実際に理解できたことを書いていきます。まず、今回訪問させていただいたAS-MECA Bernard社の社長アラン・ソヴァ氏が学んだ大学に伺い、在校生と交流しました。その後、工場へ移動し切削を行う機械の見学をしました。今回訪問したフランスの切削企業は、今後のさらなる発展のため、展示会を通じて協力関係を持った日本の企業3社(由紀精密、Dyshow、クリード)と手を組み、一つのアライアンスを発足させました。その経緯についてお話ししていただきましたが、言葉の壁があり、さらに使っている技術もところどころ異なるなか、さらなる成長のために手を取り合い、協力していこうとしている様子はとても印象的でした。日本からフランスに行き、現地での日本側の代表をされている方のお話を聞きましたが、リーマンショックを乗り越えるため、あえてリスクを取って、海外に行きそこで働くといったお話は、将来海外での勤務も視野に入れている私たちにとって非常に興味深いお話でした。
 また、訪問した企業は、近年大きな生産設備への投資を行ったと聞いてはいましたが、実際に最新の機械を見させてもらい、またそれを十分に使うための今後の計画の説明を受けることができました。幸いなことに、ヨーロッパでの研修の前に、日本国内でも切削の工程を担当している由紀精密という企業に訪問する機会を得ましたので、同じ工程を担当する二つの工場を見学したことになります。茅ヶ崎の由紀精密本社に見学に伺った時には、切削機械は、切削のための刃を回転させ、鉄を削る旋盤と、切削のための刃を固定させ鉄を回転させることで鉄を削るフライス盤の二種類があることを説明していただきました。また、二つの工程にはそれぞれ強みと弱みがあり、加工する製品の形によってどちらの工程を用いるかを判断しているとのことでした。この時点で、切削加工についての基本的な知識を得ることができました。その後工場見学でのお話を受け、疑問に思ったことをさらに調べていくうちに、フランスのAS-MECA Bernard社ではどのような加工が行われているのか興味を持つようになりました。事前調査の結果、フランスの工場に見学に伺った時には、機械を構成する細かい部品の性質や構造に関する説明を理解することが可能になり、また、先ほど説明したフライス盤の最新型を紹介してもらった時には、旧式の機械の違いを把握することができました。このように、この研修を通じて実際の体験を交えながら日本とフランスの工場について理解できたことはとても興味深かったです。

AS-MECA Bernard社の工場にて

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WTO訪問 小池有人(経済学部2年)

 フランスのリヨンからスイスのジュネーブに移動した翌日、今回の短期海外研修の企業訪問の2つ目として僕たちが伺ったのは世界貿易機関(WTO)です。主権国家やそれに準ずる存在が世界を構成しているが、世界経済はグローバル化・ボーダーレス化しているため、国家間の様々な取り決めが必要となってきます。そこで、WTOは、貿易に関する世界的なルールの策定、策定されたルールの実施に関する作業、貿易に関する紛争を解決する機能の3つを主に行っております。
 現地では、WTO貿易政策検討部参事官の早藤昌浩氏が案内してくださり、WTOの会議の進め方やどういう人間が集まっているかなどについて説明してくださいました。
 WTOで勤めるには完璧な英語が求められ、話せるだけでなく完全に文法を使いこなせないと公文書は書けないため、書類選考の段階で落とされる人が大半であるとおっしゃっており、非常に狭き門なのだなと痛感いたしました。また、専門知識も必要とされ、大学院で学位を取っていることが求められるそうです。実際に会議場に入らせていただき、日本の席や議長の席に座ってその空気感をつかむことができました。
 早藤氏の言葉に刺激を受けたのは僕だけではないと思います。今回の研修に参加した僕ら10人は少なくとも何らかの形で将来的に国際関係、国際的な仕事に携わることを希望しているので、グローバル化・ボーダーレス化する国家の拡大する通商をまとめ上げているWTOの構成や活動を実際に働いている人から直接お話を伺うことができ、非常に新鮮な体験をできたと思っております。

WTOでの集合写真

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JETROジュネーブ事務所訪問 中森香音(経済学部2年)

 スイスのジュネーブに到着した次の日9月20日、私たちはJETROジュネーブ事務所を訪れました。ジュネーブの中心駅から歩いて行ける距離に事務所はありました。JETROジュネーブ事務所では杉山百々子氏によるレクチャーを受け、JETROの活動について教えていただきました。JETROと呼ばれる日本貿易振興機構は日本国内に46、全世界55か国に74の事業所を構える大きな組織です。JETROの活動目的は日本と世界各国の貿易の拡大、経済協力の促進を目指すことだそうです。この目的を達成するために、JETROは日本企業の海外展開支援、海外企業の誘致、調査・研究を主に行っています。JETROが独立行政法人として活動したのは2003年からですが、その前身となる財団法人海外市場調査会として活動し始めた1951年からの蓄積した関係機関とのネットワークや知識・経験をもって、海外進出を考える日本企業に情報と機会を提供して海外ビジネスをサポートしています。JETROジュネーブ事務所は1971年に設立し、駐在員2名、ナショナルスタッフ4名と、比較的少人数で運営していました。ヨーロッパの中央に位置し、小さな国ではあるが国際機関が集中してヨーロッパの中でも重要な役割をもつスイスで日本企業のサポートに日々取り組んでいるそうです。具体的には、日本の魅力を伝えるための展示会・商談会を開催し、企業の海外進出の足掛かりを設けたり、すでに現地に進出した企業のその後の支援をしたりしているとのことです。その後の質疑応答の時間には、学生からの細かな質問にも快く答えていただきました。また、学生の中には将来にJETROで働くことを考えている人もいたので、キャリアパスについて詳しく教えていただき、実際の職場風景を見ることができて有意義な経験でした。

JETROジュネーブ事務所でのレクチャーの様子

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JTI 訪問と夕食会 関戸陽美(経済学部2年)

 一連の企業訪問の最後に、私たちは Japan Tobacco International (JTI)を訪問しまし た。JTIはJT(日本たばこ)の子会社であり、海外におけるたばこの製造・販売の拠点と なっています。JTI本社では、最初にジュネーブ勤務の社員3名様と東京本社の役員1名様からJTの概要についてレクチャーをしていただき、その後活発な質疑応答が行われました。レクチャーでは、JTが買収を繰り返したことにより世界第3位のたばこメーカーとなっていること、紙たばこの需要は縮小してきているもののバリューは伸びてきていること、電子たばこが急速に成長し競争が激しくなってきていること、といったたばこ市場に関する話や、JTが参入している医薬事業や加工食品事業の話、また今後のたばこ市場の予測について丁寧に説明していただきました。質疑応答では、CSRやJTの電子たばこ「プルー ム・テック」について、また海外勤務についてなど幅広い話を伺うことができました。
 一度解散したのちに、18時から本社近くのレストラン「Edelweiss」にて夕食会がありま した。本場のチーズフォンデュを味わいながら社員の方のお話を伺うことができ、終始和やかな雰囲気でした。大学時代にしておくべきこと、スイスでの生活、JTに入社した理由や社内の雰囲気など、レクチャーでは聞けなかった様々なことを教えていただきました。自分のキャリアについて考える良い機会となり、有意義な時間を過ごすことができました。
 私にとってたばこ産業というのは未知の業界であり、今回の企業訪問で初めて全体像を掴むことができました。ある程度事前学習をしていたものの、直接お話を聞いて改めてJTの直面している競争の激しさを認識しました。レクチャーの中に「環境変化を観察・推測して、適応する能力が必要」という話があったのですが、グローバル化した現在どの業界も今まで以上に厳しい競争にさらされていることを考えると、これは他企業にも共通して言えることなのではないかと思いました。海外で働くために英語力は必要ではあるものの、それはあくまでツールであり、真に必要とされているのはグローバル市場で勝ち抜いていくための深い観察力や適応力だということを考えさせられました。

JTI本社にて、質疑応答中

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ディジョン・ボーヌ訪問 吉田大志(経済学部2年)

 私たちは、滞在7日目にディジョン、8日目にボーヌを訪れました。14世紀から15世紀にかけて、ブルゴーニュ公国に属していたという共通点を持つ両都市は、石造りを基調とした街並みや大聖堂が現存しており、私たちにヨーロッパの「中世」を感じさせてくれました。
 ディジョンに着いて、私たちは街を散策しました。かつてのブルゴーニュ公国の首都ディジョンにはたくさんの名所がありますが、中でもブルゴーニュ公爵宮殿に最も目を引かれました。1365年に建てられたゴシック様式の石造りの宮殿ですが、現在ではディジョン市役所として使用されており、市民生活に根付いている施設です。次に、その隣にあるディジョン美術館に行き、公国時代の作品だけでなく他のヨーロッパやエジプト、イスラムで制作された作品を鑑賞しました。夕食にはブフ・ブルギニョンという牛肉の赤ワイン煮を食べました。牛肉の旨みをワインの香りが引き出していて、絶品でした。
 ボーヌではまず施療院(オスピス・ド・ボーヌ)に行きました。百年戦争が激化するさなかの1443年にブルゴーニュ公国の宰相ニコラ・ロランが創設したもので、そこでは連日連夜、医師や修道女たちが貧しくて病に苦しんでいる民衆を世話していました。施療院の中には、キリスト教に関する絵画や像、修道女たちが神に祈るための礼拝所があり、当時の民衆とキリスト教のつながりを実感しました。またボーヌはフランスでも有数のブドウとワインの生産地で、毎年11月にはこの施療院で「オスピス・ド・ボーヌ」と呼ばれる有名なワインのオークションが行われています。それは、施療院がかつてワイン造りを行い、その売り上げで運営費を賄っていたことに由来しています。
 私たちはワイン博物館を見学して、ブルゴーニュのワイン作りの歴史について学びました。ワインはローマ時代から作られていることや、赤ワインと白ワインの作り方の違いなど多くの面白い展示がありました。その後私たちは街の高台に移動しました。そこから見た辺り一面のブドウ畑の景色は一生忘れられません。

ボーヌの施療院にて

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ストラスブール訪問 宮田将季(経済学部2年)

 この海外調査も終盤に差し掛かった9日目、私たちは最後の訪問都市、ストラスブールに到着しました。ストラスブールというと、ヨーロッパの主要な国際機関が置かれている近代的な町というイメージが強かったけれど、実際には、川や自然と古い街並みが調和したきれいな街という印象で、訪問した都市の中では一番観光都市としての側面が強いように感じました。
 まず9日目の夕方に、中心街を囲うように流れるイル川を遊覧船でクルーズし、音声ガイドでストラスブールの歴史を学びました。翌日は、全長142メートルもあるノートルダム大聖堂やアルザス伝統の木組みの家が並ぶプティット=フランス地区を観光し、ラテン文化とゲルマン文化が混ざり合うアルザス地域特有の文化を肌で感じることができました。大聖堂は、高さ112メートルの屋上まで登ることができ、そこから街が一望できるほど壮大なものでしたが、今は観光名所となっている大聖堂も、戦いが起こるたびに破壊の対象となり、敵国に奪われないようステンドグラスが持ち出されていたという話を聞き、驚きました。アルザス地方特有の料理やワインもまた、ドイツの影響を強く受けたもので、夕食のソーセージに添えられたシュークルートや果実味のある白ワインなどからも、ドイツ、フランスにかわるがわる支配されてきたこの地域特有の歴史を感じましたが、町がどちらの国の帰属になろうとも、そこに住んでいる人々の暮らしは変わらず連綿と受け継がれ、独自の文化を形成していくということを強く実感した時間でした。
 また、午後の自由時間には、中心にある旧市街から少し離れた場所にある欧州議会の本会議場まで行き、前日から見てきた街の雰囲気とは違った、近代的で大きな本会議場に圧倒されました。もともと議会場内の見学が曜日の関係で叶わなかったこともあり、門の外から建物を眺めるだけでしたが、欧州各国の国旗が欧州旗とともに掲げられている姿を見て、リヨン政治学院で議論した移民問題やジュネーブで訪問したWTOなど、これまでの調査を思い返しながら、帰国前日が過ぎていきました。

イル川とアルザス特有の木組みの家々

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